介護を検討中のご家族の皆様、大切な方が安心して暮らせる老人ホームを探す際、最も気になるのは「費用」ではないでしょうか。「結局いくらかかるの?」「年金だけで暮らせる施設はあるの?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないはずです。
この記事では、2025年現在の老人ホーム(特に民間施設)の費用相場について、「初期費用(入居一時金)」と「月額費用」の2つの側面から詳しく解説します。その上で、施設の種類ごとの費用比較、地域差、そして「費用を安く抑えるための具体的な方法」まで、介護を検討中のご家族が知りたい情報を網羅的にご紹介します。
この情報を参考に、ご自身やご家族にとって最適な老人ホーム選びを進めていきましょう。
Contents
1. 老人ホームの費用の基本構造と相場:知っておきたい2つの費用
老人ホームにかかる費用は、大きく分けて「初期費用」と「月額費用」の2種類があります。
1-1. 初期費用(入居一時金・敷金など)の内訳と相場
初期費用とは、入居時に一括で支払う費用を指します。民間の有料老人ホームでは「入居一時金」と呼ばれることが多く、これは家賃を前払いするような性格を持っています。
- 入居一時金: 有料老人ホームで多く見られる費用で、家賃の前払い分として支払われます。高額になるケースもありますが、「償却」という形で一定期間居住することで返還額が減っていく仕組みが一般的です。
- 敷金: サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、一般的な賃貸住宅に近い形態の施設で初期費用として設定されます。退去時に修繕費などを差し引いて返還されるのが一般的です。
全国の老人ホーム全体で見た場合、初期費用(入居一時金)の平均は数百万円規模ですが、これは一部の高額な施設が平均値を押し上げているためです。実際には、中央値は約20万円とされており、「入居一時金0円」や「低額な敷金のみ」で入居できる施設も多く存在します。初期費用を抑えたい場合は、このような施設を視野に入れると良いでしょう。
1-2. 月額費用(家賃・食費・介護費など)の内訳と相場
月額費用は、毎月継続して支払う費用です。この月額費用こそが、長期的な負担を左右する重要なポイントになります。主な内訳は以下の通りです。
- 家賃(居住費): 居室の賃料です。施設の立地、居室の広さやグレードによって大きく変動します。
- 食費: 1日3食の食費です。おやつ代やイベント食などが含まれる場合もあります。
- 管理費: 共用部分の維持管理費、事務費用、人件費などが含まれます。
- 水道光熱費: 居室や共用部分の水道、電気、ガス料金です。個別のメーターがない場合は定額の場合もあります。
- 介護サービスの自己負担分: 介護保険が適用されるサービスを利用した場合の1割〜3割の自己負担額です。
- その他: 日用品費、医療費、おむつ代、レクリエーション費など、日常生活に必要な諸費用が含まれます。
月額利用料の全国平均は17〜18万円、中央値で13〜14万円前後と報告されています。多くの施設が月13〜15万円程度に収まっていますが、提供されるサービスや居室の種類によって多少の差が生じます。
2. 民間老人ホームの種類別費用比較:最適な施設を見つけるために
老人ホームと一口に言っても、提供されるサービスや費用体系は多岐にわたります。ここでは、主な民間施設の費用相場と特徴を比較し、ご家族の状況に合った施設を見つけるための参考にしてください。
最適な施設選びでお悩みなら、まずは当社の無料相談をご利用ください。
2-1. 介護付き有料老人ホーム:手厚い介護体制と費用のバランス
介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐しています。食事・入浴などの介助、看護師による健康管理など、手厚い介護が提供される民間施設です。要介護度が高い方でも安心して生活できる点が大きなメリットです。サービスごとに課金されるのではなく、介護度によって料金が決まります。サービスは必要な分提供を受けることができます(定額制)。
- 初期費用(入居一時金): 平均で数百万円規模(例: 約574万円)。ただし、近年は「入居一時金0円」プランも増えています。
- 月額利用料: 平均約28.9万円(中央値23.1万円)。全国平均より高めの傾向にあります。
介護体制が充実している分、費用は高めですが、必要な介護サービスがすべて月額費用に含まれているため、介護度が重くなっても費用の変動が少ないというメリットもあります。
2-2. 住宅型有料老人ホーム:自由度の高い生活と介護サービスの外注
住宅型有料老人ホームは、食事提供や安否確認などの生活支援サービスが中心の施設です。介護が必要な場合は、外部の訪問介護やデイサービスなどを契約し、利用します。ケアマネージャーが作成したケアプランに従い、利用分だけ費用が発生します。施設によっては、定期巡回型サービスと提携しており、その場合は、定額でケアを受けることもできます。
- 初期費用(入居一時金): 平均100万円前後ですが、中央値では数万円〜数十万円程度。入居一時金0円の施設も多く存在します。
- 月額利用料: 平均16〜17万円(中央値14万円程度)。介護付き有料老人ホームに比べ、比較的低価格帯に収まる傾向があります。
自立している方や、要支援レベルの介護が必要な方に適しています。必要な介護サービスを必要な分だけ利用できるため、費用を抑えやすい選択肢と言えます。
2-3. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):賃貸感覚で入居できる選択肢
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けのバリアフリー対応賃貸住宅です。主に、安否確認や生活相談サービスが提供されます。介護が必要になった場合は、住宅型有料老人ホームと同様に外部サービスを利用します。住宅型有料老人ホームと同様、外部の訪問介護やデイサービスなどを契約し、利用します。介護サービスはケアマネージャーが作成したケアプランに従い、利用分だけ費用が発生します。施設によっては、定期巡回型サービスと提携しており、その場合は、定額でケアを受けることもできます。サービス付き高齢者向け住宅の管轄が、国土交通省であり、住宅型有料老人ホームの管轄が、厚生労働省になります。
- 初期費用: 敷金程度(平均約20〜25万円)。入居一時金は基本的に不要なため、初期費用を抑えたい方におすすめです。
- 月額費用: 平均16万円前後(中央値15万円程度)。有料老人ホームよりやや割安な傾向があります。
比較的自立度が高い高齢者が、賃貸住宅に住むような感覚で入居しやすいのが特徴です。ただし、介護度が重くなると、別途サービス利用料が増える点には注意が必要です。
2-4. グループホーム:認知症ケアに特化したアットホームな環境
グループホームは、認知症高齢者が少人数(1ユニット5~9人)で共同生活を送る住宅型の介護施設です。認知症ケアに特化した専門的なケアが受けられ、家庭的な環境で生活できるよう工夫されています。民間企業が運営していることが多いですが、行政がその区域において必要な数を把握して、計画的に施設数、事業者を選定しています。
- 初期費用: ゼロ〜数十万円程度(多くは敷金程度)。
- 月額利用料: 平均約12〜14万円。他の施設種別に比べ、比較的費用を抑えやすい傾向があります。
ただし、入居には「要支援2以上かつ認知症であること」「施設と同じ市町村に住民票があること」などの条件があります。また、定員が少ないため、地域によっては待機が発生するケースもあります。
【民間施設の種類別費用目安まとめ】
施設の種類 | 初期費用(概算) | 月額費用(概算) | 主な特徴 |
介護付き有料老人ホーム | 0円~数千万円(平均数百万円) | 15万~40万円程度 | 24時間体制の手厚い介護。要介護度が高い方向け。 |
住宅型有料老人ホーム | 0円~数百万円(平均100万円前後) | 10万~20万円程度 | 生活支援中心。介護サービスは外注。 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 数万円~数十万円(平均20万円前後) | 10万~17万円程度 | 賃貸感覚。安否確認・生活相談。 |
グループホーム | 0円~数十万円 | 12万~15万円程度 | 認知症ケア専門。入居要件あり。 |
(上記金額は2025年時点での各社データ平均・中央値等に基づく概算です。)
3. 老人ホーム費用に地域差は?都市部と地方でこんなに違う!
老人ホームの費用は、立地する地域によって大きな差があります。特に、都市部と地方では、月額費用に顕著な違いが見られます。
3-1. 都市部(首都圏・大都市圏)の費用傾向
東京、大阪、名古屋の大都市圏では、土地代や物価が高く、初期費用や月額利用料も総じて割高です。
例えば、東京都の老人ホーム月額費用は平均29.7万円にも上るとのデータもあり、全国平均を大きく上回ります。駅近でアクセスの良い施設は特に人気が高く、費用設定も高めです。
3-2. 地方都市・郊外エリアの費用傾向
一方、地方都市や郊外エリアでは、土地・建物コストが低いため、同種の老人ホームでも月額費用が抑えられる傾向にあります。宮崎県の老人ホーム月額費用は平均8.3万円と、東京都と比べて3倍近い開きがあるというデータもあります。
費用を重視する場合は、現在お住まいの地域だけでなく、ご家族の実家近くの郊外施設や、居住地から多少離れた地方の施設も選択肢に入れることで、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。
地域による費用差や具体的な物件情報については、お気軽に当社へご相談ください。
4. 老人ホームの費用を安く抑える5つの方法:後悔しないための節約術
老人ホームの費用は決して安くありませんが、いくつかの工夫をすることで費用負担を軽減することが可能です。介護を検討中のご家族は、ぜひ以下のポイントを参考にしてください。
費用に関する具体的なご相談は、当社の専門家までお寄せください。
4-1. (1) 入居一時金が不要な施設・プランを選ぶ
初期費用を抑えたい場合、最も効果的なのは入居一時金が0円の施設やプランを選ぶことです。公的な施設である特別養護老人ホームはもともと初期費用は不要です。しかしながら、民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でも、入居一時金を不要としている施設が増えています。
ただし、初期費用をゼロにする代わりに、月額費用が割高に設定されているケースもあります。初期費用を抑えるか、月々の支払いを抑えるか、ご自身の状況に合わせての検討が重要です。
4-2. (2) 公的な介護保険制度・補助制度を最大限に活用する
公的な制度を上手に利用することも重要です。老人ホーム利用にかかる自己負担額を大きく減らせる可能性があります。特に介護保険が適用されるサービスでは、所得に応じた減額措置が用意されています。
- 高額介護サービス費: 介護保険サービスの自己負担額(1〜3割)が、所得に応じた一定の上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
- 特定入所者介護サービス費(食費・居住費の減額): 介護保険施設を利用する方で、所得や貯蓄が基準以下の方を対象に、施設での食費と居住費を減額してくれる制度です。いわゆる「負担限度額認定」による減免措置です。
- 社会福祉法人の利用者負担軽減制度: 社会福祉法人が運営する施設で、所定の届出をしている場合、低所得者の利用者について介護サービス利用料が25%軽減される制度です。
これらの国や自治体の制度は、申請しないと適用されません。お住まいの市区町村の高齢福祉窓口や、担当のケアマネジャーに相談し、利用できる制度を積極的に確認しましょう。
4-3. (3) 施設選びの工夫でコストダウン
同じようなサービス内容の施設でも、選び方を工夫することで費用を大きく抑えられる場合があります。
- 立地条件の見直し: 前述の通り、都市部の中心地や駅近の施設は高価になりがちです。思い切って郊外エリアや駅から少し離れた施設を検討すると、家賃相当額が下がり、入居一時金も低めになる傾向があります。
- 築年数の古い施設: 新築・築浅のホームは設備が綺麗な分費用も高めです。築年数が経過した施設は料金を低めに設定しているケースが多く、建物は古くても長年の運営実績があり、質の高いケアを提供している所も少なくありません。
- 居室タイプの選択: 個室よりも**多床室(相部屋)**の方が利用料(部屋代)が抑えられます。民間施設でも部屋の広さやグレードによって月額費用が変わるため、必要最低限のプランを選ぶことで費用軽減につながります。
これらのポイントを総合的に検討し、「絶対条件ではない部分で妥協する」ことが費用圧縮のカギとなります。例えば、新しさや立地よりも料金優先で選ぶ、個室にこだわらず相部屋も検討するといった柔軟な姿勢が大切です。
4-4. (4) パンフレットやインターネット情報だけでなく「見学」で費用を確認
ウェブサイトやパンフレットに記載されている費用はあくまで目安です。実際に施設を見学する際には、以下の点を確認しましょう。
- 提示されている費用の内訳を詳細に確認する: 「管理費に何が含まれるか」「食費はイベント食も含むか」「介護サービスはどこまで含まれるか」など、不明な点は質問し、具体的に何にいくらかかるのかを把握することが重要です。
- 追加費用が発生する可能性のあるサービスを確認する: 医療費、おむつ代、理美容代、趣味活動費など、月額費用に含まれていないサービスは、別途費用が発生します。これらの費用も考慮に入れた上で、総額を試算しましょう。
4-5. (5) 複数の施設を比較検討し、見積もりを取る
一つの施設だけで判断せず、複数の施設を比較検討し、それぞれから詳細な見積もりを取ることを強くおすすめします。
老人ホーム紹介センターなどの無料相談サービスを活用すれば、ご自身の予算や介護度、希望条件に合った施設を効率的に探すことができます。プロの視点からアドバイスを受け、費用に関する疑問を解消しながら、後悔しない施設選びを進めましょう。
まとめ:老人ホームの費用は賢く選んで後悔しないために
老人ホームの費用は、初期費用と月額費用、そして施設の種類や地域、提供されるサービス内容によって大きく異なります。この記事でご紹介した2025年最新の相場情報と費用を抑えるためのコツを参考に、ご自身やご家族にとって最適な施設を見つけてください。
【ポイント】
- 初期費用は0円の施設も多い: 高額なイメージがある入居一時金ですが、0円や低額の施設も増えています。
- 月額費用は地域差が大きい: 都市部より地方の方が費用を抑えられる傾向にあります。
- 介護保険制度や補助金は積極的に活用: 国や自治体の制度を利用すれば、自己負担額を軽減できます。
- 施設選びの工夫が重要: 立地、築年数、居室タイプを見直すことで費用を抑えられます。
- 最終的には「見学」と「比較検討」: 実際に見て、話を聞き、複数の見積もりを取って判断しましょう。
大切な方が安心して快適に暮らせる場所を見つけるために、費用面での不安を解消し、納得のいく施設選びを進めていきましょう。
老人ホームの費用についてもっと詳しく知りたい方、ご自身の条件に合った施設を探したい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。
参考情報
- 厚生労働省:高額介護サービス費について https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム:サービスにかかる利用料(介護保険の解説) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 国民生活センター:身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190530_1.html
- 国民生活センター:消費者トラブルFAQ 老人ホーム https://www.faq.kokusen.go.jp/category/show/162?site_domain=default
- WAM NET(ワムネット):福祉・保健・医療情報 https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/
- WAM NET(ワムネット):介護保険最新情報 https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou/detail-list?bun=020060090
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム:全国の介護事業所・生活関連情報検索 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/