マイナンバーなど、最近電子化を促進するニュースが増えています。マイナンバーばかりがフォーカスされていますが、処方箋についても電子化が導入されているのをご存知でしょうか?医師が発行する処方箋をデジタル化し、薬局とオンラインで共有する「電子処方箋」の運用が全国で開始されてから、間もなく半年を迎えます。政府は2024年度末にほぼ全施設をカバーするとの目標を掲げていますが、現状ではその達成には厳しさを感じざるを得ません。電子処方箋の普及に向けた現状や課題についてまとめてみました。
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現状の電子処方箋導入率
全国に約23万ある医療機関・薬局のうち、導入済みはわずか2%の4690施設にすぎません。そのほとんどが薬局で、医療機関側は461施設(医科診療所423、歯科診療所24、病院14)だけです。
電子処方箋導入が進まない理由
導入が進まない理由の一つとして、電子処方箋を発行する際に必要となる医療従事者の資格証明書「HPKIカード」の発行に時間がかかっていることが挙げられます。このカードは医師や薬剤師などの資格を証明するもので、申請が集中しているため、受け取るまでに通常より1~2カ月ほど時間がかかっています。
また、導入を見送っている鳥取県の病院担当者は「補助金も受けられるが、経費負担が大きい」と指摘します。複数の病院に通っている患者への重複処方などを防げるなどの利点が病院や患者側に十分伝わっていないといい、「義務でもないため急ぐ必要はなく、様子見をしている状況だ」との見解を示しています。
電子処方箋導入のメリットと現状の反応
一方で、電子処方箋を導入した全国展開する大手調剤薬局の担当者は「入力時間の短縮やミスが少なくなった」と歓迎しています。ただし、これまでに電子処方箋を受け付けたのは10店舗に満たないといい、「導入と運用にコストがかかっている。早く医療機関でも導入が進むよう国が呼び掛けてほしい」と述べています。
別の大手薬局も、半年間の処方実績はわずか1件で、「受け入れ体制は整っている。過渡期なので、導入にはもう少し時間がかかるのでは」との見方を示しています。
厚労省担当者は「導入してもらえるように、これまで以上に周知を徹底していきたい」としています。
電子処方箋の導入による影響と期待
これらの事実から、電子処方箋の導入が全国的に進んでいくためには、まだ解決すべき課題があることがわかります。しかし、その導入により得られる様々なメリットを考えれば、導入を進める意義は大きいと言えるでしょう。今後、さらなる普及が期待されます。
電子処方箋の導入が進むことで、患者、医療機関、薬局、全てにおいて様々な利点が期待されます。患者にとっては、自身の薬の情報を一元化でき、複数の医療機関での重複処方を防ぐことが可能となります。また、オンラインで薬を注文できるようになり、通院の手間が省ける利点もあります。
一方、医療機関や薬局にとっては、入力時間の短縮やミスの減少といった効率化が期待されます。さらに、医療情報のデジタル化は、診療の質の向上にも寄与します。
今後の展望として、政府は2024年度末にほぼ全施設の電子処方箋導入を目指しています。そのためには、さらなる周知と導入支援が求められます。また、導入を検討している医療機関や薬局に対しても、早期の導入と運用に向けた準備が求められます。
アマゾン薬局の進出と電子処方箋の普及
アマゾンの医療業界への進出が、電子処方箋の普及を加速させる可能性があります。具体的には、「アマゾン薬局」が日本でサービスを開始すれば、オンラインで処方薬を取得する需要が増え、これが医療機関や薬局に対する電子処方箋導入の推進力となるでしょう。
アマゾン薬局のサービスは、処方箋をアップロードし、薬を指定の薬局で受け取るか自宅に配送するというものです。消費者にとってこの利便性は大きく、自宅からでも薬の注文が可能となります。これにより、電子処方箋の導入が一気に進む可能性があります。
しかし、アマゾンの進出は医療機関や薬局にとって新たな挑戦でもあります。既存のビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性があり、アマゾンが電子処方箋を活用した新たな薬の販売・配送サービスを展開すれば、それに対応するために早急な電子処方箋の導入が求められるでしょう。
これらの動きは、日本の医療業界における電子処方箋の普及に重要な影響を与えることでしょう。アマゾンの進出によって、日本の医療業界は大きな変革を迎えることになるかもしれません。
自宅での受診と薬の受け取りへの期待
新型コロナウイルス感染症の流行以降、スマートフォンやパソコンを使った、オンライン診療が広く行われるようになりました。「オンライン診療」と「オンライン服薬指導」、そして「電子処方箋」を組み合わせることにより、自宅にいながら受診から処方薬の受け取りまで完了できる時代を迎えることになるでしょう。これにより、病院での待ち時間や薬局での待ち時間のストレスを軽減することが期待されます。
電子処方箋の全国的な導入は、日本の医療サービスの質と効率性を一層向上させる大きな一歩となることでしょう。その実現に向けて、関係各所の協力と努力が引き続き求められます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa058522802a48f7e28de796a3de50f7c4a373fd