自宅での介護が難しくなった時、多くの人が考えるのが施設介護です。しかし、「介護施設」と一言で言っても、その種類はさまざま。それぞれの施設で受けられるサービスや費用、入居条件は大きく異なります。
この記事では、介護施設の種類ごとに、どんな介護サービスが受けられるのか、費用はどのくらいかかるのかを詳しく解説します。あなたの状況に最適な施設を見つけるための参考にしてください。
Contents
公的介護施設で受けられる介護サービス
公的介護施設は、主に自治体や社会福祉法人が運営しています。費用を抑えられる一方で、利用条件があったり、入居まで時間がかかったりする点が特徴です。
特別養護老人ホーム(特養)で受けられるサービス
特養は、正式名称を「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」といいます。これは、要介護3以上の方が対象となる公的介護施設です。常時介護が必要で、自宅での生活が難しい方の「終の棲家」となる施設と言えるでしょう。
提供される介護サービス
- 日常生活全般の介助: 食事・入浴・排泄・更衣・移動など、24時間体制で介助が受けられます。
- 健康管理・機能訓練: 看護師による健康チェック。機能訓練指導員によるリハビリ、レクリエーション活動も提供されます。
- 総合的なケア: 生活相談員や栄養士も配置。多職種によるきめ細やかなケアが受けられます。
費用と利用条件 公的施設のため、月額費用はおおむね10〜15万円程度と比較的安価です。ただし、所得や加算サービスによって異なります。費用が安い分、非常に人気が高く、数ヶ月から年単位の入居待ちが発生することもあります。
介護老人保健施設(老健)で受けられるサービス
老健は、正式名称を「介護老人保健施設」といい、要介護1以上の方が対象です。病院と自宅の中間施設と位置付けられ、在宅復帰を目的としたリハビリに力を入れています。
提供される介護サービス
- 医学的リハビリテーション: 医師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)といった専門職が配置。集中的なリハビリが受けられます。
- 日常生活の介助: 食事や入浴、排泄などの介助も提供されます。
- 健康管理: 看護師による健康管理や投薬管理も行われます。
利用期間と費用 老健への入所期間は原則3〜6ヶ月程度までと定められています。費用は月額約9〜20万円程度が目安です。これは、リハビリや医療ケアが充実している割に、比較的費用が抑えられています。
介護医療院で受けられるサービス
介護医療院は2018年に創設された、新しい公的介護施設です。要介護1以上で、長期にわたり医療的ケアが必要な方が主な対象です。
提供されるサービス
- 手厚い医療ケア: 医師や看護師が常勤。点滴・酸素療法・褥瘡処置など日常的な医療処置を行えます。
- 介護サービス: 食事や排泄といった介護も提供されます。
- 終末期ケア: 高度な医療ケアが必要な方や、看取り・ターミナルケアにも対応しています。
費用と定員 公的施設のため、費用は月額およそ10〜20万円程度とされます。医療ニーズの高い方を長期に受け入れるため、定員数は少なめ。特養同様に入所待ちが生じる場合があります。
養護老人ホームで受けられるサービス
養護老人ホームは、経済的・家庭的な理由で自宅での生活が困難な低所得の高齢者(概ね65歳以上、自立〜要支援程度)を対象とした公的施設です。そのため、介護保険施設ではありません。
提供されるサービス
- 生活支援: 日常生活上の相談・支援や、食事提供・洗濯掃除の補助などが中心です。
- 介護サービス: 施設としての身体介護は基本的に提供されませんが、外部の訪問介護サービスなどを利用する形で対応します。
費用 入所者の収入に応じて費用負担が決まる応能負担となっており、低所得者であれば自己負担はほとんどありません。
ケアハウス(軽費老人ホーム)で受けられるサービス
ケアハウスは正式には「軽費老人ホームC型」と呼ばれます。高齢者向けの低料金で利用できる、生活支援付きの住宅です。**自立高齢者向けの「一般型」**と、**要介護者も受け入れる「介護型」**の2種類があります。
提供されるサービス
- 一般型: 食事提供、緊急時の対応、生活相談、安否確認などが提供されます。
- 介護型: 上記に加え、介護職員が配置され、軽度の介護サービス(食事介助や入浴・排泄介助など)も受けられます。
費用 公的補助があるため、月額利用料は7〜20万円程度に抑えられています。低所得者には減免制度もあります。
民間の介護施設で受けられる介護サービス
民間の介護施設は、株式会社などの民間企業が運営しています。公的施設より費用は高めですが、その分設備が豪華だったり、サービス内容に特色があったりする点が特徴です。
介護付き有料老人ホームで受けられるサービス
介護付き有料老人ホームは、要支援・要介護の高齢者を主な入居対象としています。施設内で介護保険サービスが提供されるのが特徴です。介護度によって料金が決まっており、必要なサービスをうけることができます(定額制)。
提供される介護サービス
- 包括的な介護: 介護スタッフが24時間常駐し、食事・入浴・排泄など、日常生活の介助が包括的に提供されます。
- 充実したサービス: レクリエーションやリハビリ、イベント行事など、民間ならではの充実したサービスがあります。
- 医療連携: 嘱託医や看護師が配置され、日常的な健康管理や緊急時対応を行います。
費用 サービスが包括的なため、費用は高めです。入居一時金として0円〜数千万円、月額利用料は食費・居住費込みで15〜35万円程度が相場です。介護サービス費も月額費用に含まれることが多いです。
住宅型有料老人ホームで受けられるサービス
住宅型有料老人ホームは、生活支援サービス付きの高齢者向け居住施設です。自立〜要介護まで幅広い方が対象ですが、施設自体は介護保険の居宅サービス提供主体ではありません。外部の介護サービス会社を利用します。利用したサービスに応じて料金が発生します。例えば通常の訪問介護サービスであれば、利用した分だけ料金が発生します(定期巡回型の場合は定額制)。
提供されるサービス
- 生活支援: 食事提供、安否確認、生活相談、掃除・洗濯などの家事援助、見守りなどがパッケージで提供されます。
- 介護サービス: 介護が必要な場合は、入居者個人が外部の訪問介護事業所などを別途契約して利用します。
費用 入居一時金は数十万〜数千万円と幅広く、月額費用は家賃・管理費・食費などを合わせて15〜35万円程度が一般的です。外部サービス利用分の費用は別途発生します。
健康型有料老人ホームで受けられるサービス
健康型有料老人ホームは、介護が不要な自立した高齢者のみを対象とした施設です。いわば、高齢者向けのリゾートマンションのような位置付けです。
提供されるサービス
- 生活サポート・娯楽: レストランでの食事提供、清掃サービス、フロントサービス、各種アクティビティの企画などが中心です。
- 設備: ジムや温泉、シアタールームなど、豪華な共用設備を備えたホームも多いです。
費用 入居一時金・月額利用料ともに、他の施設種別より高額です。介護が必要になった時点で退去が一般的なため、あくまで健康な期間の居住プランとして検討しましょう。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)で受けられるサービス
グループホームは、正式名称を「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症高齢者を対象とした少人数制の介護施設です。原則として、施設と同一市町村に住民票がある方に限定されます。
提供されるサービス
- 認知症ケア: 介護スタッフが24時間体制で常駐し、食事・入浴・排泄などの介助に加え、服薬管理や脳トレ、レクリエーションなど、認知症ケアに特化したサポートを行います。
- 家庭的な生活: 少人数で共同生活を送り、家庭的な雰囲気の中で役割を持ちながら生活することで、認知症の進行緩和を図ります。
費用 入居一時金は0〜数百万円程度が多く、月額費用は食費込みで15〜30万円前後が一般的です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で受けられるサービス
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者住まい法に基づくバリアフリー構造の高齢者向け賃貸住宅です。60歳以上の方が入居でき、自立から要介護まで幅広い高齢者が対象です。
提供されるサービス
- 安否確認・生活相談: 日中は職員が常駐し、安否確認や生活・介護に関する相談に対応します。
- バリアフリー: 建物は全館バリアフリー設計で、手すりや緊急通報装置が整備されています。
- オプションサービス: オプションで食事提供サービスや家事代行サービスを利用できるところもあります。
費用 賃貸方式のため、入居一時金は不要で、敷金のみ(家賃数ヶ月分程度)というケースが一般的です。月額費用は家賃・共益費・サービス費(見守りなど)で10〜30万円程度と幅があります。
施設介護の費用相場と費用負担の考え方
介護保険の自己負担
特養、老健、介護医療院、グループホームでは、介護サービス費の1割〜3割を自己負担します(生活保護の方は除く)。有料老人ホームなどの民間施設では、施設利用料に介護サービス費が含まれている場合や、外部サービス利用で別途負担する場合があります。
費用負担の考え方
ご本人やご家族の経済状況によって選べる施設も変わってきます。「費用を抑えたいなら公的施設だが待機期間が長い」「すぐ入居したいなら民間も視野に」など、費用と緊急度、必要なケア水準とのバランスで検討しましょう。
在宅介護と施設介護の違い・選択のポイント
サービス提供体制の違い
在宅介護は家族や訪問介護員が自宅でケアを行うのに対し、施設介護では介護スタッフが24時間常駐する環境でケアを受けられます。施設では、夜間も含めた見守りや緊急対応が可能なため、ご家族の身体的・精神的負担が大幅に軽減されるメリットがあります。
費用負担の違い
在宅介護は、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービス利用料、住宅改修費、介護用品代などが発生します。総額では施設入所より低コストになりやすいと言われる一方で、施設介護では月額費用に生活費や介護サービス費が包含されています。
生活環境の違い
在宅介護は、住み慣れた自宅で暮らせる安心感があります。施設介護では集団生活となり、日々のスケジュールやルールがある程度決まっています。
選択のポイント
在宅と施設のどちらを選ぶかは、要介護者の状態(介護度・認知症の有無・医療ニーズ)、家族の介護力、経済状況、本人の希望などを総合的に判断する必要があります。「夜間の介護が必要で家族では難しい」「認知症が進行し安全確保が困難」といった場合は、施設入所のメリットが大きいでしょう。
まとめ:自分に合った施設介護サービスを選ぶために
この記事では、さまざまな介護施設で受けられる介護サービスの内容と特徴を解説しました。それぞれ対象者の条件、提供サービス、費用、役割が異なります。まずは公的施設と民間施設の違いを踏まえ、自身(または家族)の介護ニーズに合った種類の施設に絞り込みましょう。
候補となる施設が決まったら、実際の施設見学や体験入居を通じて雰囲気やケア内容を確認することをおすすめします。現在の状態だけでなく、将来的な介護度の変化まで見据えた選択が重要です。
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参考情報
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/
- WAM NET(ワムネット): https://www.wam.go.jp/
- 介護保険制度について(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html