近年、日本の社会保障制度は大きな転換期を迎えています。特に注目されているのが、「年収130万円の壁」問題の恒久化です。ここでは、本政策パッケージと高齢者給付金の改正にも焦点を当てます。年収130万円超でも被扶養のままでいられる恒久化措置、さらに学生の認定基準引き上げなど、改正のポイントを分かりやすく解説します。本コラムは毎日新聞(2025年1月18日)をもとに作成されています。
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高齢者給付金の改正が注目される背景
高齢化が進む日本では、公的年金や給付金制度が多くの人の生活を支えています。しかしながら、近年、社会保障費の増大や労働力不足などの社会的課題が深刻化しています。そのため、高齢者給付金を含む様々な給付制度の見直しが急務となっています。
結果、厚生労働省では年金制度改革関連法案などの改正作業に着手しています。高齢者給付金の改正内容を含む一連の制度改革を進めています。今回の制度改正は、幅広い世代に影響を与える重要な変更です。扶養控除の継続の恒久化は、働く世代、学生、高齢者にメリットがあります。収入制限を気にせずより柔軟な働き方が可能になり、社会全体の活力向上に繋がります。高齢者の就労や、若者の学業と仕事の両立支援において、意義を持つ改正といえます。
「年収130万円の壁」恒久化とは何か
年収130万円の壁とは
パートの年収が130万円以上になると、自身で社会保険料を支払うことになります。これがいわゆる「年収130万円の壁」です。働き控えをして、年収を130万円未満に抑えることが一般的です。
恒久化による影響
今回、「130万円の壁」を超える一時的な収入増なら、扶養控除が受けられる措置が恒久化されます。パート労働者は2年以内なら年収が130万円を超過しても被扶養者として認められます。その後、年収が130万円未満に戻れば、再び被扶養者になることができます。この制度改定は、社会保障全体の給付と負担のバランスを見直す一環です。
働く意欲のある人が収入アップを目指しやすい環境を整える狙いもあります。
学生の認定基準が150万円に引き上げられる理由
学生の被扶養者認定について、重要な基準改正が予定されています。これまで19~22歳の学生は、年収130万円未満が被扶養者の条件でした。今回、「特定親族特別控除」により、基準が年収150万円未満まで引き上げられます。
この改正は、学業と仕事を両立する学生を支援する目的があります。学費や生活費の負担が大きい学生に対し、緩和することで経済的な余裕を持たせます。この支援は将来の社会を支える若い世代の経済基盤を強化する意味も持っています。
「年収106万円の壁」への特例措置
実は、「年収130万円の壁」の他にも「年収106万円の壁」という問題があります。今回の改正では、厚生年金保険料の労使折半ルールを見直し、企業の負担割合を増やせる特例措置を3年間限定で設ける方針が示されています。
働く人の負担を抑えつつ、社会保険加入へのハードルを下げる効果が期待されます。社会保険未加入で働き控える人を減らし、財源確保にもプラスに働くと考えられます。
高齢者給付金の改正内容と働く高齢者への影響
高齢者の中には、年金を受給しながらパートやアルバイトなどで働き続ける人も多くいます。近年は「人生100年時代」とも呼ばれ、定年後も元気に働く高齢者が増えているのが現状です。
給付水準の安定化
高齢者給付金の財源を安定化させるためには、多様な働き方を推進し、社会保険料を確保する必要があります。ただし、消費ニーズの強い現役世代からの過度な徴収は勤労のモチベーションを減衰させてしまうので、給付が行われる高齢者にも多く労働に参画してもらい、給付に依存しない生活設計をしてもらう、もしくは社会保険料の納付を通じて給付原資の拡大になるようにすることが望ましいとも考えられます。年収130万円の壁の恒久化や年収106万円の壁の特例措置は、手取り収入の観点から働く高齢者のモチベーションを高め、働く高齢者が多くなればなるほど社会保険料を納付する割合も増えることになり、給付金の原資となる保険料収入を増やす効果が期待できます。
収入増と給付金との関係
収入が増えた結果、健康保険や年金の被扶養者から外れることで、保険料負担が発生する可能性も高くなります。高齢者給付金自体の額には直接影響がない場合でも、収入と支出のバランスを考慮したうえで働き方を決める必要があるでしょう。ただ、高齢者にとっては、近い将来の年金に充当されるということもあり、社会保険負担が増えることは悪いことではない点は重要な視点です。当社(つばさメディカルグループ)が主な業務にしている介護の職場では高齢の方の採用が多いのですが、高齢の労働者はほぼ決まって厚生年金の加入を希望され、それはおそらく近い将来に給付する年金を意識していることに由来しており、現役世代とは考え方が明らかに異なっています。この点も高齢者給付金の改正の制度設計に織り込むと効果的になると考えられます。
今後の法案成立スケジュールと注意点
政府は今回の改正について、2025年3月初旬を目途に閣議決定する見通しです。
まとめ
「年収130万円の壁」「年収106万円の壁」などが大きく関わる重要なテーマです。高齢者だけでなく、学生やパート労働者など幅広い層に影響が及びます。
労働力不足の解消と社会保険料収入の安定確保を両立させるのは課題です。政府や厚生労働省は、より柔軟な仕組みを導入しようとしています。