付き添い入院に初の支援策――寝具費補助で親負担軽減と看護師の人手不足解消へ

子どもを診察する若い看護師

共同通信(2025年1月4日)によるとこども家庭庁は、乳幼児が入院した際に家族が付き添う「付き添い入院」について、医療機関の休憩室設置費や簡易ベッドなどの購入費を補助する方針を打ち出しました。看護師の人手不足への対応として、2024年度補正予算に1億9千万円を計上し、家族の負担を軽減する狙いがあります。しかし、看護師の人手不足を背景とした構造的な問題は依然として深刻で、今回の予算額が「十分とは言えないのではないか」という声もあがっています。
本記事では、新たに打ち出された施策の概要や、家族負担・看護師不足の課題、さらには休暇取得や在宅支援など今後求められる総合的な対策について詳しく考察します。

付き添い入院とは?看護師の人手不足が理由

付き添い入院とは、子どもが入院中に家族(親など)が病室や病院近くで寝泊まりしながら介助や看護の一部を担うことを指します。医療機関側の人員不足を理由に付き添いをお願いされるケースも多く、数日から長期にわたる場合もあります。

付き添い入院の主な課題

  • 家族への過度な負担:慣れない病室での生活や長時間の看病による睡眠不足
  • 看護師の負荷:慢性的な人手不足で、医療現場が家族に業務を依頼せざるを得ない
  • 費用面の負担:交通費や宿泊スペース、寝具の準備など金銭的な負担も大きい

看護師不足と付き添い入院の関係

小児科や小児病棟を中心に看護師不足は深刻化しています。とくに夜間や長期入院に対して十分な看護体制を確保できない医療機関もあり、結果として家族が看病を補う形となっています。
しかし、家族側が長期間付き添うことで、仕事や家事を中断せざるを得なくなり、家族自身の健康を損なうケースも少なくありません。さらに、看護師不足が解消されなければ、付き添い入院を要請する状況は今後も続く可能性があります。

新たな補助制度の概要

こども家庭庁は2024年度補正予算に1億9千万円を計上し、都道府県を通じて医療機関に補助を行う方針を明らかにしました。具体的には、以下のような支援が予定されています。

休憩室設置費用の補助

  • 補助上限額:1医療機関あたり最大750万円
  • 具体例:家族が仮眠や休憩をとれる専用スペース、シャワールームなどの設置費用

寝具など物品購入費の補助

  • 補助上限額:小児病床1床あたり最大2万円
  • 具体例:簡易ベッド、枕、毛布など、家族が利用できる物品の購入

一見すると大きな前進にも思えますが、全国で必要とされる補助の規模を考えると、「1億9千万円」という予算は十分ではないとの指摘もあります。

看護師の人手不足は深刻・さらなる総合的な対策が求められる理由

子育て支援としての予算拡充

1億9千万円という予算は、全国の医療機関を支援するには小規模だと言わざるを得ません。小児科病床を抱える病院は全国に多数あり、設備面だけでなく、人的体制の強化にも支出が求められます。看護師不足や少子化が叫ばれる中、「子どもを優先した医療体制の拡充」は、国全体でさらに力を入れて取り組むべき課題です。

休暇取得や在宅支援の強化

設備支援のみにとどまらず、付き添い入院に伴う仕事の休暇が取得しやすくなる制度設計も求められています。具体的には、「付き添い入院に関する医師の証明書」などを活用し、親や家族が企業や自治体から金銭的支援を受けたり、有給休暇とは別に特別休暇を取得できる仕組みを拡充することが考えられます。
また、訪問介護・特に訪問看護を活用し、家族が自宅に帰れる時間を確保する仕組みを導入することも有効です。たとえば、子どもの状態が比較的安定している場合や、短時間のサポートで十分なケースでは、自宅で適切な看護を受けられる環境を整えることで、家族が病院に24時間付き添い続けなくても済むようになります。こうした支援があれば、家族が一定時間自宅に戻って休養をとったり、仕事や家事などに専念したりすることが可能となり、長期的な負担軽減にもつながります。

医療従事者の派遣・地域連携

地方を中心に小児科医や看護師が不足している地域では、設備を整えても十分な人員を確保できない場合があります。そのため、医療従事者の派遣制度や地域間での連携強化が不可欠です。看護師の負担を減らしつつも子どもと家族が安心して入院生活を送れる体制を構築するため、国や自治体、病院間の協力が求められています。

今後の期待と課題:看護師の人手不足を前提として

  • 家族の負担軽減:より快適に過ごせる環境と休暇・在宅ケアなど総合的サポートの整備
  • 医療現場の負荷軽減:看護師不足への抜本的な対策と施設補助を組み合わせて離職率を抑制
  • 制度設計の柔軟性:子どもの病状や家族の状況に応じた多様なサポート制度の確立
  • 予算の抜本的拡充:全国の医療機関で活用できる十分な財源を確保し、設備面と人的支援の両面を網羅

まとめ

付き添い入院の負担を軽減するための財政支援は、看護師不足が深刻化する中での重要な第一歩です。しかし、「1億9千万円」という予算規模や設備補助に偏った内容では十分な効果が得られない恐れがあります。
今後は、休暇取得の支援や金銭面でのサポート、必要に応じた訪問介護士や看護師の派遣など、家族の多様な状況に合わせて柔軟に対応できる総合的な支援策が求められます。国全体で看護師不足の解消と子ども・家族が安心して治療に専念できる体制を整えるため、さらなる検討と予算拡充が急務といえるでしょう。