給食の唐揚げは1個、でも半導体には数兆円? – 不安が招く少子化と、給食費無料化、問われる国の優先順位

物価高、貧しくなった給食

「今日の給食、唐揚げが1個だけ…」 SNSに投稿された一枚の写真が、「寂しい」「少なすぎる」と大きな話題を呼びました。給食費無償化の問題も含め、写っていたのは、福岡市の小学校で提供された給食です。この「唐揚げ1個問題」は、単なる献立の話ではありません。その裏側には、物価高と戦う現場の苦労があります。そして国の予算配分のあり方という、私たちの社会が直面する大きな課題が隠されていました。

話題の「唐揚げ1個給食」、その実態は?

SNSで「寂しい」と指摘されたこの献立。福岡市教育委員会によると、この唐揚げは1個約60gで、一般的な唐揚げの約2個分に相当する大きさだといいます。献立全体のカロリーも620kcalと、市が定める基準(600kcal)をしっかり満たしており、栄養面は計算されていました。

なぜ「大きい1個」? 昭和から続く現場の知恵

では、なぜわざわざ大きな唐揚げを1個だけ提供するのでしょうか。これは調理の手間を省くための工夫であり、予算を考えての最大限の努力だと思います。また、昭和の時代から続く伝統的なスタイルなのだそうです。小さく作るよりも大きく作る方が調理工程を効率化できる。これは現場の知恵が詰まった献立でした。

物価高との戦い – 1円を削り出す現場の努力

しかし、こうした工夫だけでは乗り切れない厳しい現実があります。それが、止まらない物価高騰です。

福岡市は財政力のある自治体ですが、それでも現場は悲鳴を上げています。「同じ価格では、以前と同じ献立は立てられない」と栄養教諭は語ります。肉の部位を安いものに変える努力があります。そして、香味野菜を1g単位で調整したりと、涙ぐましい努力でコストを切り詰めているのです。全国の給食現場が、同様の課題に直面しています。給食費無償化が検討され、今後、実施されていくにあたり、十分な予算がないとさらなる努力が求められていきます。

視点を変える – 給食費と国家プロジェクトの巨大格差

現場が1円単位で費用を切り詰めている一方で、国は未来への投資として巨額の予算を動かしています。その代表例が、北海道で進む国策半導体プロジェクト「ラピダス」です。

政府はラピダスに対し、研究開発で9,200億円、さらに追加で約8,000億円。合計約1.72兆円もの直接支援を決定しました。半導体・AI分野全体では、この数年で5兆円を超える予算が計上されています。

これに対し、全国の公立小中学校で給食費無償化のために必要だと試算されている金額は、年間約5,000億円です。国家プロジェクトに投じられる予算の一部があれば、日本中の子どもたちが無償で温かい給食を食べられる計算になります。では、この金額の差をどう受け止めるべきでしょうか。

未来への投資、本当に優先すべきは何か?

もちろん政府は「産業政策と社会保障では予算の枠組みが違う」と説明するでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。将来の成否が不透明な半導体事業に兆単位の資金を投じる。一方で、現実に貧しい子どもたちがいる状況は「本末転倒」と言わざるを得ません。

子どもたちの食という最も基本的な部分が切り詰められている。こうした国の姿勢は、国民に深刻な不安を与えます。「この国は本当に自分たちの生活や、子どもたちの未来を守ってくれるのだろうか?」という不信感が広まれば、人々が安心して子どもを産み育てようと思うでしょうか。このような状態では、国民の将来不安は増すばかりです。深刻な少子高齢化がさらに加速してしまうのは当然です。

今こそ、政府は政策の優先順位を大胆に見直すべきではないでしょうか。

子どもたちへの投資こそが、将来の日本を確実に豊かにする最も確実な投資です。安心して栄養のあるものをたくさん食べ、健やかに学び、育つ環境を保障すること。それこそが、どんなハイテク産業よりも強固な国の土台を築くはずです。給食費無償化を通じて、子供達に安全で豊かな食事を提供することが、国の未来を築く手段です。

まとめ 給食費無償化により子供がたくさん食べられるように

福岡市の「唐揚げ1個」から見えてきたのは、物価高に苦しむ現場の努力。そして国の予算配分のアンバランスな現実でした。現場の工夫に感謝するだけでは、問題は解決しません。

未来の産業を育てることも重要です。しかし、その未来を生きる子どもたちの「今」をおろそかにしては元も子もありません。国民が将来に希望を持てない国に明るい未来はありません。私たち一人ひとりが税金が何に優先して使われるべきなのか、国の未来にとって本当の投資とは何なのかを真剣に考えます。そして給食費無償化政策の変更を強く求めていく必要があります。