火葬まで7〜10日待つ時代に。「多死社会」で家族が今から備えておきたいこと

多死社会で家族が備えておくこと

多死社会が、いよいよ本格的に始まろうとしています。読売新聞の調査では、火葬場を運営する政令市の4割超で、2040年頃までに受け入れが追いつかなくなるおそれがあると報じられました。

そこで、この記事では多死社会とは何かを、最新の報道とデータからわかりやすく解説します。また、家族が今から備えておきたいこともご紹介します。

多死社会で家族が備えておくこと

多死社会とは?亡くなる人が増え続ける社会

多死社会とは、高齢者の増加にともなって、亡くなる人の数が多い状態が続く社会のことです。

実際に、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、年間の死亡者数は2040年にピークを迎え、約165万人になるとされています。さらに、2025年の死亡者数は、すでにこの推計より約7万人多かったと報じられています(読売新聞オンライン)。

なお、高齢者の人口そのものは2043年にピークを迎える見込みです。くわしくは「高齢者3,624万人、でも本当の山場は2043年」もご覧ください。

火葬場が足りなくなる?報道のポイント

今回の報道の主なポイントは、次のとおりです。つまり、多死社会の影響は、すでに火葬の現場に表れ始めています。

状況都市(報道による)
すでに受け入れ可能な件数を上回っている横浜市、広島市
2030年代までに上回るおそれさいたま市、千葉市、川崎市、相模原市、堺市
2040年頃までに上回るおそれ岡山市、福岡市

たとえば、千葉市では、亡くなる人が増える冬に7〜10日ほどの「火葬待ち」が起きているといいます。また、火葬場の新設や増設には多額の費用がかかり、自治体の財政を圧迫しています。さらに、東京23区では火葬料の高騰も課題になっています。このように、多死社会では「亡くなった後」の準備も欠かせなくなります。

札幌の現場から:多死社会で見えてきたこと

ここからは、札幌で介護・看護と高齢者の住まいに携わる私たちの、現場での実感です。

まず、札幌では、今回の報道のような火葬場のひっ迫は、今のところ現場ではあまり感じていません。一方で、私たちが日々接する中で多いと感じているのが、一人暮らしの高齢者の孤独死です。

さらに、身寄りがない方や、家族が遠くに住んでいる方も少なくありません。そのため、入居している施設が、亡くなった後の対応を求められることがあります。

たとえば、身寄りのない方が病院で亡くなった場合、病院から施設に、至急ご遺体を引き取るよう求められます。また、施設で亡くなった場合は、施設が行政に連絡をとり、その後の対応を進めることになります。

もちろん、葬儀の専門会社が請け負ってくれることもあります。しかし、それまでの連絡や調整、立ち会いなどは、施設にとって報酬の出ない、いわばボランティアでの対応です。そのため、現場の負担はとても重いのが実情です。

つまり、多死社会の課題は、火葬場の数だけではありません。「誰が最期を見届け、誰が手続きをするのか」という問題が、札幌ではすでに身近になっています。だからこそ、入居や住み替えのときに、亡くなった後の連絡先や葬儀の希望を確認しておくことが大切です。

多死社会で家族が困ること

では、多死社会になると、残された家族にはどんな影響があるのでしょうか。主に次のようなことが考えられます。

  • 火葬・葬儀まで日数がかかる:その間の安置費用や、遠方の親族の予定調整が負担になります。
  • 費用が増える:火葬料や安置の費用が上がる地域もあります。
  • 死後の手続きが多い:役所への届出、年金、銀行口座、公共料金など、短期間にたくさんの手続きが必要です。
  • 住まいの片付け:賃貸住宅の場合は、家財の片付けや契約の終了も急いで進める必要があります。
  • 身寄りがない場合:手続きを担う人がいないと、本人の希望どおりに進まないことがあります。

今から備えておきたい5つのこと

  1. 本人の希望を聞いておく:葬儀の形式や、連絡してほしい人をエンディングノートなどにまとめておきます。
  2. 葬儀社と費用の目安を調べておく:いざというときに慌てずに済みます。
  3. 死後の手続きの担当を決める:誰が役所や銀行の手続きをするか、家族で話し合っておきます。多死社会では手続きが集中しやすいため、早めの準備が安心です。
  4. 身寄りがない場合は専門家に相談する:死後の手続きを任せる契約(死後事務委任)などの方法があります。
  5. 最期を過ごす場所を考えておく:自宅・施設・病院のどこで過ごしたいかを話し合います。自宅を希望する場合は、訪問看護などが支えになります。

つまり、多死社会への備えは「亡くなった後」だけでなく、「最期までどこで、どう暮らすか」を考えることでもあります。

多死社会だからこそ、住まいと看取りを早めに考える

多死社会では、高齢者の住まいの問題もより身近になります。たとえば、大家が高齢者に部屋を貸すのをためらう理由の一つは、孤独死や残された家財の片付けへの不安です。くわしくは「高齢者が賃貸を借りられない理由とは?」で解説しています。

だからこそ、元気なうちに、介護や看護の支えがある住まいや、最期を過ごす場所について考えておくことが大切です。多死社会を前向きに乗り越えるために、家族で一度話し合ってみてください。

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