【医療保険の訪問看護】介護保険との違いは?自宅で安心して療養するために知っておきたい基礎知識

看護をする看護師
people home healthcare concept - asian female nursing assistant is using blood meature to examine senior man on bed

高齢化が進む日本では、在宅で療養する方が増加しています。
しかし、病院から退院した後に「自宅で医療的なケアを受けられるのだろうか?」と悩む方も多いです。
そこで注目を集めているのが、医療保険の訪問看護です。
自宅という慣れた場所で医療のサポートを受け、安心して生活を続けることができます。
さらに、家族の負担軽減にもつながります。そこで、本記事では、介護保険の訪問看護との違いを分かりやすく解説し、加えて、利用方法や料金体系、メリットなどを詳しく説明します。

医療保険の訪問看護とは?

訪問看護には、医療保険と介護保険の2種類があります。どちらも看護師が自宅を訪問してサービスを提供する点では共通しています。しかしながら、その目的や対象者は大きく異なります。

医療保険の訪問看護は、主に病気やケガの治療を目的とした医療サービスです。そのため、病状の安定化と悪化防止に重点を置いています。結果、医師の指示のもとでサービスが提供されます。

一方、介護保険の訪問看護は、加齢や障害によって日常生活に支障をきたしている方を対象としています。このサービスでは、日常生活の維持・改善と自立支援を主な目的としており、利用者の生活の質の向上を目指します。

このように、両者はサービスの目的や内容が異なるため、利用者の状態や必要なケアの内容に応じて、適切な保険を選択することが重要です。

医療保険と介護保険の訪問看護の違い

介護保険と医療保険の訪問看護は、それぞれ以下のような特徴があります。

項目医療保険の訪問看護介護保険の訪問看護
対象者・病気やケガで療養が必要な方(例:悪性新生物、脳血管疾患、心臓病、難病など)
・40歳未満で、主治医から「訪問看護指示書」を交付された方。
・40歳以上で、要支援・要介護認定を受けていない方。
・特定の疾病(例:末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症など)を患っている方。
65歳以上の要介護者、40歳以上65歳未満の特定疾病による要介護者。
サービス内容病状の観察、医療処置、リハビリテーション、ターミナルケアなど。具体的には、点滴、注射、創傷ケア、カテーテル管理、褥瘡の予防・処置、呼吸器管理、リハビリテーション、疼痛管理、終末期ケアなど。
日常生活の支援(食事、入浴、排泄介助など)、リハビリテーションなど。
利用目的病状の安定、悪化防止、在宅療養の継続、住み慣れた環境での継続的なケアの提供。日常生活の維持・改善、自立支援。
主な提供者病院、診療所、訪問看護ステーション。訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所。
費用負担医療保険が適用され、自己負担は1~3割(ただし、障害者手帳をお持ちの方や18歳未満の方は1割負担)。介護保険が適用され、自己負担は1~3割。
利用回数・原則として、週3回までの利用が可能。
・特別訪問看護指示書が交付された場合や、特定の疾病に該当する場合は、週4回以上、1日2~3回の訪問が可能。
・利用回数に制限はなく、必要に応じてサービスを利用可能。
・ただし、要介護度に応じた支給限度額が設定されており、その範囲内での利用。

医療保険の訪問看護を利用するメリット

医療保険を利用した訪問看護には、以下のようなメリットがあります。

  • 住み慣れた自宅で療養生活を送ることができる:病院とは異なり、自宅というリラックスできる環境で療養生活を送ることができます。
  • 家族の介護負担を軽減することができる:訪問看護師が医療的なケアや生活の支援を行うことで、家族の介護負担を軽減することができます。
  • 24時間体制で、必要な時に医療的なケアを受けることができる:必要に応じて、24時間体制で訪問看護師のサポートを受けることができます。
  • 病院への入院回数を減らすことができる:訪問看護によって、病状の悪化を予防し、病院への入院回数を減らすことができます。
  • QOL(生活の質)を向上させることができる:自宅で安心して療養生活を送ることで、QOL(生活の質)の向上につながります。

料金体系

料金の計算方法については、コラム「訪問看護の料金・自己負担割合の計算:徹底解説」に詳しく書かれています。

 医療保険の訪問看護を利用するための手続き

主治医の指示

まず、主治医に訪問看護の必要性を相談し、指示書を書いてもらいます。医療保険の訪問看護を受けるためには、主治医の指示書が欠かせません。
そこで、まずは外来受診や病院の入院中に、主治医に訪問看護の必要性を相談しましょう。

訪問看護ステーションの選択

次に、訪問看護ステーションを選びます。病院に併設されている訪問看護ステーションや、自宅近くの訪問看護ステーションなど、自分に合ったステーションを選びましょう。 特に、訪問看護ステーションを選ぶ際には、利用者の病状、 生活環境 、家族の介護力などを考慮することが大切です。

利用開始までの流れ

訪問看護ステーションに連絡し、訪問看護の利用を申し込みます。訪問看護ステーションのスタッフが、利用者の自宅を訪問し、サービス内容や料金について説明します。その後、契約を結び、訪問看護が開始されます。

主な必要書類

  • 健康保険証
  • 主治医の指示書
  • 介護保険証(介護保険の訪問看護を利用する場合)

医療保険の訪問看護に関する補足情報

 利用できるサービス内容の具体例

医療保険の訪問看護では、以下のようなサービスを受けることができます。

医療ケア

  • 病状の観察:体温、脈拍、血圧などの測定、呼吸状態、意識レベルの確認など
  • 医療処置:医師の指示による点滴、注射、創傷ケア、カテーテル管理、褥瘡の予防・処置、呼吸器管理、疼痛管理など
  • 服薬管理:薬の飲み忘れ防止、副作用の確認など

リハビリテーション

  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーション

日常生活の支援

  • 食事指導:病状に合わせた食事の指導
  • 排泄ケア:便秘や下痢のケア、人工肛門の管理など
  • 入浴介助:安全に入浴できるよう介助

認知症のサポート

  • 安全な生活環境の整備
  • 認知トレーニングの実施
  • 家族への介護指導

ターミナルケア

  • 終末期における疼痛管理、症状緩和、精神的なサポートなど

医療保険と介護保険の訪問看護の併用

介護保険と医療保険の訪問看護は、一定の条件を満たせば併用することが可能です。ただし、併用した場合には、それぞれの保険で自己負担が発生します。

しかしながら、医療保険と介護保険の訪問看護を上手に組み合わせることで、より充実したケアを受けることができます。具体的には、医療保険の訪問看護では病状の管理を行い、一方で、介護保険の訪問看護では入浴や食事の介助といった日常生活の支援を受けることができます。このように、両方の保険を適切に活用することで、医療的なニーズと生活支援の両面から、包括的な在宅療養が実現できます。

そのため、訪問看護の利用を検討する際には、まず併用の可否を確認し、次に自己負担額を把握したうえで、最適なケアプランを立てることが重要です。

併用する際の条件

医療保険と介護保険の訪問看護を併用するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 医療保険と介護保険の両方の要件を満たしていること
  • 医療保険と介護保険の両方で必要なケアが認められていること
  • 主治医とケアマネジャーの両方の同意を得ていること

併用する際の手続き

主治医に医療保険の訪問看護の指示書を書いてもらい、ケアマネジャーに介護保険の訪問看護のケアプランを作成してもらいます。

料金体系

医療保険と介護保険の訪問看護を併用する場合、それぞれの保険の料金体系に基づいて自己負担額が計算されます。

まとめ

介護保険と医療保険の訪問看護は、それぞれ異なる目的と役割を持っています。まず、医療保険の訪問看護は病気やケガの治療に重点を置きます。一方で、介護保険の訪問看護は日常生活の支援に重点を置きます。そのため、自分にとってどちらが適切かを見極めることが重要です。

さらに、医療保険と介護保険の訪問看護を併用して、包括的なケアを受けることも可能です。例えば、医療的なケアと日常生活の支援を組み合わせることで、より質の高い在宅療養を実現できます。このように、両者をバランスよく活用することが大切です。

では、実際に訪問看護を利用する際にどうすればよいのでしょうか? まず、訪問看護に関する疑問や不安があれば、各市区町村の窓口、訪問看護ステーション、地域包括支援センターに相談することをお勧めします。加えて、積極的に情報収集を行います。自分に合ったサービスを利用することで、住み慣れた自宅で安心して療養生活を送ることができ、結果として、QOL(生活の質)の向上も期待できます。

ご参考

公益社団法人日本訪問看護財団